日本人の大腸がんの半数に関与?「コリバクチン産生菌」とは|東大・阪大等の最新研究を解説

目黒・世田谷・大田区近辺の患者様や、痔や腸の悩みを持つ都内や横浜川崎近辺の方が多く来院される、ちはらメディカルクリニック目黒院長の千原直人が、日々病院に寄せられているさざまな質問に対して、簡潔にお答えしています。
今回は、前回の記事
こちらの続編です。まだの方は、前の記事をご覧ください。
今回はさらに踏み込んだ、最新の科学的知見をご紹介します。

千原院長の解答はこちら。(院長のプロフィールは、こちらからご覧ください。)
東京大学医科学研究所、大阪大学、国立がん研究センター、東京科学大学に所属する研究者らが科学誌「Nature Genetics」で発表した論文
日本人の大腸がん発症に特定の腸内細菌が関与していることを突き止めた研究報告がありました。
日本人200人の大腸がん患者を対象に遺伝子解析(全ゲノム解析)を行った結果、約半数(非高変異型症例の44.8%)において、「コリバクチン」という毒素を作る特殊な大腸菌が発症に関わっていることが判明しました。
先行研究では、欧米を含む他国で5~20%ほどなので、日本人のほうが例が多いということです。
特に21歳から40歳で発症する若い世代の大腸がんでは、この細菌の毒素によって細胞のDNAが傷つけられた痕跡(変異シグネチャー)が70%(10人中7人)に認められました。
子供の頃からお腹の中にいる特定の細菌が、何十年もかけて少しずつDNAを傷つけ続け、最終的に大腸がんを引き起こしている可能性が示唆されました。
また、このコリバクチンによる遺伝子の変異は1965年以降に生まれた世代で多く見られ、若い世代で大腸がんが増加していることと関連がある可能性があります。
現時点では、コリバクチン産生菌を保有しているかどうかを一般診療で調べ、除菌して大腸がんを予防するという方法は確立していません。
コリバクチン産生大腸菌は、主に口から体内に入り、腸内に定着すると考えられています。
重要なのは、特殊な毒素を持つ菌だからといって、必ずしも食中毒のような症状を起こすわけではありません。
1. どこから人の腸に入るのか?
① 食べ物を介して
食品に付着した菌を口から取り込む経路が考えられます。ただし、特定の食品がコリバクチン産生菌の主要な感染源だと確定しているわけではありませんが、米国の研究で、販売されていた牛肉、ひき肉507検体のうち28検体(5.5%)から、コリバクチン産生遺伝子を持つ大腸菌が検出されました。
菌が付着した手指や物を介して口に入る、いわゆる糞口感染に相当する経路が考えられます。
ただし、コリバクチン産生大腸菌が日常生活でどの経路から最も多く伝播するのかは、まだ十分に解明されていません。
現時点で大切なのは、過度に恐れることではなく、通常の手洗いと食品衛生を心がけることです。


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